「自己実現」と聞いて何を思い浮かべますか?
・自分のやりたいことを実現させる
・理想の自分に近づける
・自分の目的が達成される
など、生きていく中での、自身の成長、成功を意味すると考えている人も多いはずです。
私がこの言葉を覚えたのは、看護学生の時です。心理学の講義で、「人間の基本的欲求」について学びました。心理学を学んだ方ならおそらく、よく知っていると思いますが、
「マズローの欲求5段階説」
この中に「自己実現の欲求」というものが出てきます。そこで、「マズローの欲求5段階説」について、説明し、「自己実現」について考えてみたいと思います。
マズローの欲求5段階説とは?
これは心理学者マズローが提唱した「欲求階層説」と呼ばれる考え方で、マーケティングの分野でも有名だと思います。
人間の欲求を図で表すと、上のようなピラミッド型になります。
下位の土台となる欲求は、生きていくうえで必要な生理的欲求などで、上位にいくに従って、なくてはならないものの欲求(欠乏欲求)から、社会的欲求、承認欲求、そして自己実現欲求(成長欲求)と積み重なっています。
マズローの考え方では、まずは下位の欲求がある程度満たされると、次の段階へ、そして最後は「自己実現の欲求」があらわれてきます。その後マズローは、さらに上の欲求を加えています。
「自己超越の欲求」です。わかりやすく言うと、名声も得て、人生が充実した人が、社会貢献したりするのが良い例です。
マズローは下位の欲求が満たされて、次の上位へと段階を踏んでいますが、人によっては、下位の欲求が満たされなくても、上位の欲求が出る場合もあります。
そこで、あらためて「自己実現」とはなにかを深掘りして考えてみたいと思います。
自己実現とは?
様々な心理学者が「自己実現」の意味について、説いています。
・ユング…自己実現とは個性化である。個性化とは個人の中に存在するあらゆる可能性を自律的に実現し本来の自分に向かうこと。また、自分の良い面と悪い面をありのまま受容できること。
・ホーナイ…自己実現とは真の自己として成長するプロセスである。他者との建設的な摩擦と自分として生きることに安心感を与える他者との善意を重要視すること。
・ロジャース…あるがままを受容し、防衛性から解放され、より大きな自律性や統合性に向けて心理的に成熟していくこと。
「個性化」「自律性」「ありのままを受容」「統合性」「安心感を与える他者との善意」などという言葉がキーワードになっていますが、はっきりとその意味を述べることは難しいです。
ただ、私が読みとれた自己実現の意味は以下の通りです。
とまとめてみました。(あくまでも、私の考える自己実現です)
単に好きな事をして生きていくとか、お金持ちになるということではなく、自分に内在しているものを自分が気づき、その姿を体現することで、心を豊かにしていくことなのだと思います。
では
自己実現ってどうすれば?
自分は○○になりたい夢があるけど、現実からは程遠い…
自分の可能性って何? そんなこと、考えた事もない
自己実現のために大事な「自分を知ること」
望んでいるものがわからない、自分の可能性ってなんだろう、自分らしさってどんな姿?
正直、なかなか、わからないものです。自分でも気づいていないこともたくさんありますし、自分自身もそうです。
そのために、大事なことは「自分を知ること」です。
1. マズローの5段階の欲求について、どの位欲求が満たされているかチェックしてみる
マズローの5段階の欲求は、基本的に下位の欲求が満たされて、次の段階へと進みます。例えば、健康状態が良いか、家族関係が良いか、社会とのつながりは良好かなど、チェックすることで、欲求があっても満たされず、不満に感じていることもあるはずです。自分の現状を知る大きなヒントになります。
2. ノートなどにアウトプットして、自己分析してみる
書き出して文字にすると、新たな発見をしたり、潜在していた思いなどが顕在化します。
自分の得意なこと不得意なこと、性格、夢中になれること、他人から褒められたこと、ワクワクしたりときめくこと、実際に長年培ってきた技術、自分が大切にしていること、などなど、書き出してみると自分の強みや伸ばしていきたいことが見えてきます。
3. 親しい人に自分のことを聞いてみる
ちょっと恥ずかしいかも知れませんが、客観的に自分を知ることも大事な発見につながります。
WILL(やりたいこと) CAN(できること) MUST(しなければならないこと)がわかると踏み出しやすい
上記の図はキャリアアップのためにリクルートグループが考えたフレームワークです。
ビジネス的な考え方ですが、自己実現に役立つ考え方だと思い、載せました。
WILL(やりたいこと):自分は何がやりたいのか どんな人になりたいのか どんな人生を送りたいのかなどを
CAN(できること):自分は何ができるのか どんなスキルを持っているのか
MUST(やらなければならないこと):周りから期待されていること
3つの輪について
「WILL」については、若いうちは、なかなか描けないかも知れません。目の前にある仕事を覚えていくこと、社会人として身に着ける教養などで毎日が過ぎていくことが多いと思います。また、結婚し家庭を持てば、生活のために働いていかなければなりません。
「CAN」についても、自分が仕事を積み重ねていく中で、これは得意なこと、不得意なことに気づく場面があるでしょう。そして、他人と比べて、自分の能力や苦手な部分に目がいくものです。できる人と自分を比べがちになると思いますが、他人の強みと比べても、自分の価値はわかりません。自分にできること、強みは何かを自分で気づくことが大切です。
「MUST」については、「WILL」「CAN」に関係なく、職場であれば、会社から期待されることです。
WILLとCANが重なる部分が自己実現の方向性
自分がやりたいこと、どんな人になって、どんな人生を送りたいか
そして、自分には何ができるのか、どんなスキルがあるか、
ここが整理されると、自分の方向性が見えて、WILLとCANが重なる部分がわかってきます。この重なった部分こそ、自己実現の方向性です。
さらにそれがMUST(周りから期待されること)であれば、自分という存在意義をより強く感じることができるのです。
さいごに
「自己実現」について、心理学とビジネスの視点から考えてみました。
「自己実現」は簡単な事ではありませんし、「生活を送ることで、精一杯、そんなことを考える余裕なんてない」というのが現実なのかも知れません。
「自己実現」がなくても、マズローの5段階の欲求で、満たされていない部分に気づいて、そこが満たされるように生活を整えていくことで、より自分らしく生きることができると思います。
人生の節目節目で、自分の生き方を見つめなおす機会があると思います。
特に人生経験を重ねていく、40代や50代には、ふと考える事ではないでしょうか?
まずは、客観的に自分を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
そして、考えてばかりではなく、実際に行動に移すことこそが大切だと考えます。失敗を恐れて行動に移さなければ何も変わりません。方向がずれていたら、また修正すればいいのです。
人生に望むことは人それぞれだけど、モヤモヤした生き方を変えたいときはまずは自分を客観的に見つめ直し、自ら動くことが大切
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